はじめに
心臓の手術が必要と言われたとき、患者さんやご家族の頭に最初に浮かぶのは「どこの病院で、どの先生に診てもらえばいいのだろう」という不安ではないでしょうか。
「高度な心臓手術を受けるためには、遠方にある有名な病院まで行かなければならない」と思われる方も少なくありません。しかし、長距離の移動や見知らぬ土地での入院は、患者さんにとっても、付き添うご家族にとっても、体力面でも精神面でも大きな負担となります。
私、尾﨑重之が開発した「OZAKI法(自己心膜を用いた大動脈弁再建術)」は、そうした患者さんの負担を少しでも軽くするために、全国どこでも安全に手術を受けていただけるよう、厳格な「認定・指導制度」を設けています。
本記事では、「技術を一人で抱え込まない」という開発者としての哲学と、全国の患者さんに質の高い医療をお届けするための取り組みについてお話しします。
「自分だけの技術にしない」—— 開発者としての哲学
私がOZAKI法を開発した当初から、一貫して心に決めていることがあります。それは「この手術を、私個人にしかできない”神業”で終わらせない」ということです。
どんなに優れた治療法であっても、世界中でたった一人の医師にしかできない手術であれば、救える患者さんの数には限界があります。より多くの命を救うためには、できるだけ多くの心臓外科医が「安全に」「同じ高い水準で」この手術を行えるようにすることが、開発者としての使命だと考えました。
この考えは、OZAKI法の設計思想そのものにも反映されています。私が独自に開発した「弁尖サイザー」と「テンプレート」という専用器具は、どの外科医が使っても同じように弁のサイズを正確に計測・作製できるよう設計されています。つまり、器具自体が「再現性の高さ」を担保する仕組みになっているのです。
現在、OZAKI法は世界50カ国以上で実施されており、国内外での手術・指導実績は2,000例以上に上ります。「一人の外科医の技術」から「世界標準の術式」へ——これが私の目指す道です。
患者さんの安全を守る「二重の指導体制」
いくら優れた器具があっても、心臓の手術は高度な知識と技術が求められます。「ある先生がやると良い結果が出るが、別の先生では異なる」といったばらつきは、患者さんの安全を守るうえで絶対にあってはなりません。
そこで、OZAKI法では患者さんの安全を第一に守るため、二つの仕組みを組み合わせた厳格な体制を設けています。
① 学会主導のワークショップ受講の義務化
現在、「自己心膜等による大動脈弁再建術学会(AVRec)」が主導し、心臓外科医に向けたワークショップを定期的に開催しています。OZAKI法は、このワークショップを受講してしっかりと指導を受けた医師でなければ実施できないという規則になっています。
ワークショップはこれまで十数回開催し、すでに300名以上のドクターがOZAKI法について学ばれています 。
② 「初執刀」には必ず指導医が立ち会う
ワークショップの受講だけで終わらせないのが、OZAKI法の安全体制のもう一つの特徴です。私を含む経験豊富な「指導医」が、新たにOZAKI法を導入する病院へ実際に赴き、手術室に入って直接指導しながら最初の執刀を行う「指導医制度」を設けています。
学んだ知識を実際の手術で安全に活かせるよう、指導医が現場に立ち会ってフォローする——この「見て学び、やってみて、確認する」というプロセスを経て、初めてその施設での独立した実施が認められます。
この二重の体制があるからこそ、「認定施設であれば、全国どこでも同じ水準の安全な手術を受けられる」という確信を持ってお伝えできるのです。
「地元の病院で、最高水準の医療を」——認定制度が生む安心
こうした徹底した認定・指導体制の背景には、一つのシンプルな願いがあります。
「患者さんに、ご自宅から通える距離で、安心して手術を受けていただきたい」
入院中のご家族のお見舞いがしやすいこと、術後のフォローアップのために通院しやすいこと、そして万が一の際にすぐに駆けつけられること。地元の認定病院で手術を受けられるということは、治療の質だけでなく、患者さんとご家族の生活全体にとっての大きな安心につながります。
現在、国内では70以上の認定施設でOZAKI法を受けることが可能です(北海道から九州・沖縄まで全国に展開)。全国の認定施設で私が行うのと同じように安全にこの治療を受けていただけます。
OZAKI法認定病院の探し方
では、実際にOZAKI法を受けられる病院はどのように探せばよいのでしょうか。
最も確実な方法は、本サイトの「認定病院一覧」をご覧いただくことです。地域別に認定施設を検索することができます。
一点ご留意いただきたいのは、手術を担当できる認定医が異動されるケースもあり、認定施設の状況は変わることがあります。気になる病院が見つかった際は、その病院の公式ウェブサイトや心臓血管外科のページで「OZAKI法を実施しているか」を直接ご確認いただくのが確実です。
また、かかりつけの医師から紹介状(診療情報提供書)を書いてもらうことで、よりスムーズに認定施設への受診につながります。「OZAKI法が受けたい」とかかりつけ医にお伝えいただければ、紹介状の作成に協力していただけるはずです。
技術の継承は、未来の患者さんへの責任
私が認定・指導体制にこれほど力を注ぐのには、もう一つの理由があります。
心臓の手術は「その場限りの医療」ではありません。術後も長期にわたるフォローアップが必要になる場合もあり、将来的に再手術が必要になる可能性もゼロではありません。そのとき、患者さんを最初に手術した施設が、引き続き責任を持って診続けられる体制があることは、患者さんにとって大きな安心につながります。
技術を継承された全国の認定医たちが、地域に根ざした「かかりつけの心臓外科医」として患者さんを長期的に支えていく——この継続的なサポート体制こそが、OZAKI法認定制度の本質的な価値だと考えています。
患者さん一人ひとりの命と生活を守るために、私たちは技術の継承と安全管理にこれからも全力で取り組んでまいります。
この記事を書いた人
尾﨑 重之(おざき しげゆき)
心臓血管外科医 / 医学博士
SHIGEYUKI OZAKI, M.D., Ph.D.
1983年、防衛医科大学校卒業。虎の門病院、東邦大学大橋病院などを経て、1996年にベルギー・ルーヴァンカトリック大学に留学。人工弁の動物実験を通じ「異物ではなく自己組織で弁を治す」という着想を得る。帰国後、独自の計測器(サイザー)などを開発し、2007年に自己心膜を用いた大動脈弁再建術(OZAKI法)を世界で初めて実施。2010年より東邦大学医療センター大橋病院 心臓血管外科 教授。現在、国内外で2,000例以上の手術・指導実績を持ち、世界50カ国以上へのOZAKI法の普及に尽力している。
- 累計執刀・指導症例数:2,000例以上
- 15年再手術回避率:93.4%(PMDA発表資料より)
- OZAKI法の普及国数:世界50カ国以上
- 認定施設数(国内):70以上
本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の治療法を一律に推奨するものではありません。治療の選択については、必ず担当医または認定施設の専門医にご相談ください。